固き決意


「アンドレ 後でわたしの部屋へ・・・」
オスカルは夕食後にアンドレにそっと告げる。
アンドレは怪訝な顔つきでまるで改まってなんだ?とでも言いたそうであ
ったが静かに頷いた。

『ア・ト・デ・ワ・タ・シ・ノ・ヘ・ヤ・ヘ・・・』


その日の午後フランス衛兵隊より通達があった。
明日7月13日パリ出動命令が下る――――。

これは何を意味しているのか誰にでも解かる事だ。
自分自身、『出撃』ではない!『出動』だ!!
・・・等と言い聞かせるが不安な心は振り払えない。

『ア・ト・デ・ワ・タ・シ・ノ・ヘ・ヤ・ヘ・・・』

オスカルは先に部屋に戻る。

一人部屋に戻ったものの何をして良いのか解らない。
いつも見慣れた自分の部屋。
だが、いつもと違う自分がいる。
カードを出して繰ってみてもチェスを出して並べてみても、読書をしようと
本を片手に取ってみても、そして気を落ち着かせるためブランデーをグラ
スに注ぎ口に運んでみても・・・。
何をしても手につかない。
心が落着かず、気持ちが集中できない。

『何故、アンドレを呼んだのだろう
今から・・・今から来なくともよいと断ろうか・・・』

ヴァイオリンを手に取り優しく奏でる。

頭の中はやはり集中できずに考えが纏まらない。

しかし、曲目をモーツァルトに変え弾き始めると不思議と落着いてきた。

無心に弾いている。
やわらかな音色に包まれ心にかかった霧がやんわりと晴れてくる。
少しずつ、少しずつ晴れてくる。

アンドレ・・・
わたしは決めた!
今宵はアンドレ、おまえの・・・アンドレ・グランディエの妻に・・・

オスカルがそう決意を固めた時。

コンコン!
「オスカル、おれだ・・・入るぞ」


              FIN