☆ ささやかな願い・・・ ☆

       木枯らし吹き付けるパリの街を歩く独りぼっちのあたし・・・。
       どこへ行けば良いの?
       どこに帰るとこがあるの?
       帰れない! ジャルジェ家には帰れない!!

       思い出の街角で思わず足を止める。
       ああ、ここ!
       ここがオスカル様に初めてお会いした場所!
       何時の間にかこんな所まで歩いてきたのだわ・・・。

       思い出します、あの日の事!
       あたしは生活に必死だった!!
       貴族の生活に憧れたジャンヌ姉さんが出ていってしまって、病気のかあさんと
       どうして暮らして良いのか判らなかった。
       そして、この体を汚そうと馬車のだんな様に声をかけたんだわ。
       「あたしを、一晩買ってください!」
       その時のだんな様がオスカル様。
       オスカル様はあたしに気転を利かせて下さって笑い飛ばしてくださった。
       優しく爽やかな笑顔・・・!

       再会したときは恐れ多くも奥様を切りつけようとしたあたし。
       でもオスカル様は咎めずあたしをジャルジェ家に引き取ってくださった。
       そして、妹のように可愛がってくださった!
       紛れもなくあたしの初恋・・・! 心が震えるほどの甘いうずき。
       暖かい恋の夢・・・!
       幸せだった!

       その幸せも束の間・・・。
       あたしは今、ジャルジェ家を出てそして、ポリニャック家も出た。
       もう、戻れない!!

       オスカル様!
       どうぞ、どうぞロザリーを探さないで!!
       あたしは大丈夫です!!
       ロザリーの胸の中には恋の歌と愛の夢と優しい貴方がいます・・・。
       いつまでも・・・!!

                      FIN