出逢い=開かれた扉=



 「オスカル様、ド・ビュール子爵家のイアン様がお越しになりました。」
女中の一人が伝えに来た。
「ふん、イアン・ド・ビュール。本当は僕となんか遊びたくないくせに。どうせ、他の貴族の家の子供に僕と
遊んだと自慢気に言いふらすためだけに来たんだろう。」
ジャルジェ家の“嫡子”オスカル・フランソワは読みかけの本を閉じて窓の外に目をやった。玄関のほうに
は、ド・ビュール家の馬車を厩舎のほうに連れていく馬丁の姿が見えた。オスカルはわずらわしくてたまら
ないとでもいいたげに、子供のものとは思えないほど形の整った眉をひそめてもう一度本をみつめた。
物心ついた頃から、何故か人々が自分を凝視するのを感じていた。ベルサイユの貴族など、自分の子供
にさえ関心を示さないというのに。大人も子供も、誰もがオスカルを興味ありげに見つめる。中には貴族
とは思えないほどの下卑た笑いを向ける者もいる。その度にオスカルは吐き気を覚えた。そんなオスカル
だからこそ、大人の貴族たちや彼らの子供に対して、いつも慇懃な態度で身構えてしまうのだ。しかも、貴
婦人に連れられて時折ジャルジェ夫人のサロンに顔を見せる貴族の家の子供たちは親を親と思っていな
い様子だし、貴婦人たちも自分の子供を飾り立てて、その衣装や容姿の自慢ばかりする。「軍人は貴族社
会の社交術も大切な教養の一つだ」という父の言葉がなければ、さっさとその場から離れたい光景しか目
に映らなかった。そのサロンでは、自分の子供を使ってジャルジェ家に取り入ろうと貴婦人たちが我先に、
オスカルと自分の子供を遊ばせる約束を無理やり取りつけることも度々だった。だが、子供同士で遊んで
みると、既に軍人としての英才教育が始まっているオスカルと、親達のお飾り者になっている他の貴族の
子供では、話す内容も運動能力も何もかもに歴然とした差があり、ほとんどの場合がオスカルに泣かされ
て帰っていくというパターンが続いていた。
「つまらん。」
オスカルはド・ビュール家の次男坊イアンに会うのさえ億劫だったが、常々父親からどんな人間であれ、自
分に合いに来た貴族の対面を重んじなければならないと言い聞かされていたため、しぶしぶ客間に向かっ
た。

 客間に待っていたのは、青白くひょろひょろとした不健康そうな子供。オスカルより4歳ほど年上に見える
が、着ている物ばかりがやたら立派でまるで洋服が歩いているようだ。
「やあ、イアン・ド・ビュール、よくきてくれたね。」
オスカルは精一杯のマナーとして笑顔を作って手を差し伸べた。
「やあ、オスカル・フランソワ。ご機嫌はいかが?」
(こいつまるで女みたいだな。)
オスカルは覇気のないイアンと向かい合わせて座り、
(さて、どうしたものか)
と戸惑った。母のサロンには来た事があるイアンだが、実際に面と向かって話すのは初めてだ。何を話そう
か迷った挙句、さっきまで読んでいた本の話でもしてみようと思いついた。
「僕はさっきまで、イスデーラが1756年に発表した本を読んでいたんだ。君、イスデーラの本は読んだこと
ある?」
「いいや・・・。」
(おい、答えはそれだけか?)
「じゃあ、君は普段どんな本を読むの?」
「・・・本って好きじゃないからあまり読まない・・・。」
(って、話しが終わってしまったではないか。)
オスカルは話題がなくなって困ってしまい、仕方なく最近自分が読んだ本を紹介し始めた。イアンはその話
しを聞いているのかいないのか、ただだまって座っているだけ。だんだんオスカルは一人しゃべりつづける
のをばからしく思い、イアンを外に連れ出そうとした。
「あの・・・、外に行ってみないか。家の馬が子馬を生んだばかりなんだ。子馬を見に行こう。」
イアンは相変わらず覇気のない顔をオスカルに向け
「悪いけど、厩舎など下僕の行くところには行きたくない。お洋服が汚れるもの。」
と、お茶を飲みながら言い、立ち上がろうとしない。あっさりと提案を却下されたオスカルは自分の言葉が宙
に浮いたような感じを受け、しばらく絶句してしまった。
(こいつ、いったいなにしにきたんだ。話もしない、外にも行きたくない。まあ、僕に会いに来る貴族の子供は
だいたいこんなものだけど。)
これ以上いても時間の無駄と判断したオスカルは、失礼のないように満面の笑みを浮かべ
「ちょっと失礼。」
と部屋を出ていった。3歳年上の姉、ジェゼフィーヌの部屋に向かいドアをノックすると、「どうぞ」との声。
中に入るとジェゼフィーヌが母親に習ったばかりの刺繍に悪戦苦闘している最中だった。
「あら、オスカル、どうしたの?」
ジェゼフィーヌはチラリと妹に目をやったものの、すぐさま刺繍針をにらみつけ
「んもう、どうしてすぐ糸がぬけちゃうの?」
と、すねたような口調で言った。
「ジョゼフィーヌお姉様、お願いがあるんだけど。今、ド・ビュール家のイアンが来てるんだけど、どうも僕より
も女の子との会話がよさそうなんだ。お姉様、ちょっと遊んでやってくれない?」
「またぁ?、オスカル、貴方に会いに来たんでしょう。もういやよ、これで何人目?あなたに会いに来た貴族
の子の相手を私に押し付けるのは。わたしだってあの子達と話しても楽しくないのよ。」
「だって、僕よりお姉様のほうがあの子達と遊ぶの上手なんだもの、お願い、お姉様。」
ジェゼフィーヌは天使のようにかわいい妹に頼まれると嫌とは言えなかった。刺繍にも飽きていた頃だった
のがオスカルには幸いした。
「いいわ、ちょっとからかってやりましょう。その代わりオスカル、明日、私のダンスのレッスンの相手をして
ちょうだいね。」
オスカルはにっこりうなずくと姉を客間に連れていき、自分はそのまま裏庭に向かった。

 ジャルジェ家の裏庭は前庭と趣を異にし、自然のままの木立が残っている。その中でも大きく枝を伸ばし
た木の下がオスカルのお気に入りだった。幹に持たれて目を閉じた。木立の間を風が渡る音がする。
「ああぁ、ばあや、はやく帰ってこないかなぁ・・・。」
彼女の乳母は、娘が亡くなったとかで、孫を迎えにプヴァンスまで迎えに行ってもう2週間以上が経つ。
いつも何かと自分の世話を焼いてくれる人間がいなかったら心もとないとオスカルは思っていた。ほかの女
中もちゃんとオスカルの世話をしてくれるが、それはあくまで仕事としてやっているのであって、マロン・グラ
ッセのように肉親のような情を持って接してくれるわけではなかった。オスカルは木陰で横になると真っ青に
広がった初秋の空をまぶしく見つめた。
「僕は変わってるんだろうか。他の子供と遊んでも全然楽しくないし、話も合わない。」
ふと、独り言をつぶやく。
「友達がほしくないわけじゃない。遊ぶのが嫌いなわけでもない。ただ、僕の興味のあることを他の子供は
理解してくれないし、外に出ても僕のしたい遊びはみんなが嫌う。ばあやや大人の目を盗んで木に登った
り、かけっこや戦争ごっこも誰も一緒にしてくれない。僕はこのまま誰も友達がいないままなんだろうか。」
子供心に、自分が他の子供の中で浮いていると思い、不安と孤独を感じながらも、それでもほかの貴族の
子供たちに迎合できないのがオスカルであった。友達欲しさに自分を偽って、相手に合わせることなど到底
できない相談である。オスカルは小さな悩みを抱えたまま草息れの中でうとうとしてしまった。そして、そのと
きの夢の中で、オスカルは誰か子供と一緒に遊んでいる夢を見た。その子供がどんな顔をして、どんな背
格好なのかは目覚めても憶えていなかったが、ただ、楽しくて、友達ができたことが嬉しくて、夢の中でオス
カルは思いっきり笑い転げていた。友達ができないことを思いながら寝てしまったから、そんな夢を見たの
かと、オスカルは現実で味わったことのない感情をもう一度味わいたくて、また同じ夢を見たいと願った。

 翌日の午後、ジェゼフィーヌは昨日の約束を果たそうと2時間もの間オスカルをダンスのレッスンにつき合
せた。ジョゼフィーヌにとってみれば、身長差があったものの、美しい妹が生意気そうに男性のパートを引き
うけ、しっかりとエスコートしてくれるのは気分が良いものだ。ジェゼフィーヌが疲れてやっと妹を解放すると
オスカルはほっとしながら、剣の練習でもしようと練習用の剣を下げて階下に下りていった。
ジャルジェ家の一番大きな階段の踊り場には先祖の肖像画をはじめ、軍人の家系らしく戦絵やギリシャ神
話に出てくる軍神マルスの絵のタペストリーがかけられており、自分もいつかは絵の中の武将のように戦う
のだとオスカルはその絵を見つめながら階段を降りていた。そのオスカルの眼の端に何やら黒い影が移っ
た。階下に目をやると見慣れない子供が立っていた。貴族の子供ではなさそうだ。こざっぱりとしてはいる
が、着ている服は到底貴族の子供たちが着ている華美なものではない。それに、ベルサイユでは珍しいくら
いの真っ黒の髪が目を引いた。オスカルは黒い髪の少年をじっと見詰めた。すると、その黒髪の少年は、
オスカルの視線に気付いたのか振り向いた。
(あれは誰だ?)
多くの貴族の子供たちとはまったく違う、きらきらした黒い瞳をこちらに向けている。
「君、名前は?」
「ア・・アンドレ。アンドレ・グランディエ。」
緊張気味に答えたその声は、張りがあってよく響く。
(なんだって、じゃあ彼が父上と母上から聞かされていたばあやの孫か。)
「ああ、君か。今度僕の遊び相手兼護衛として引き取られる子というのは。」
オスカルはゆっくりアンドレに近づいていく。アンドレのほうはかなりショックを受けた様子で
「お・・・お・・・おじょ・・・おじょ・・・。」と訳のわからない言葉を口走っている。
(誰も僕の遊び相手になどなれないのに。)
そう思ったオスカルの口からは
「はじめに言っておく。僕がほしいのは遊び相手ではなく、剣の相手だ。」
という言葉が出ていた。ちょうど練習用の剣を持ってきたところだ。
「ほら、外に出るよ。早く。」
するとアンドレは、顔を出したマロン・グラッセに泣きつかんばかりに抗議している。
「うわー、おばあちゃん、死む〜〜〜。うそつき、うそつき。お嬢様だなんて言って!!」
途端にマロン・グラッセはアンドレの頭を一つこずき
「見苦しい!一つ年下のお嬢様のオスカル様だよ。お相手おし。おきれいな顔に傷をつけるんじゃないよ。」
と一喝した。
「ばあや!!おかえり!!待ってたんだ。」
オスカルはマロン・グラッセに飛び込んでいった。
「オスカル様、長い間留守をいたしまして、申し訳ありません。今日からはまたこのばあやがオスカル様の
お世話をいたしますからね。それから、これが孫のアンドレです。オスカル様のために何でもいたしますの
で、ビシバシと鍛えてやってくださいまし。」
「おばあちゃん!!話が違うよ〜〜。」
アンドレは必死に訴えたが、願い虚しくそのまま外に連れていかれ、いきなり剣を握らされた。練習用の剣
とはいえ、アンドレにとってみれば初めて手にするもので、どうやって扱えばいいのかさえもわからない。
アンドレは迷った挙句、素直にオスカルに尋ねてみることにした。
「あの、俺、剣って今までもったことがないんだ。相手をしたくてもできないよ。使い方を教えてくれる?」
オスカルは驚いた。自分ができないことをこんなにはっきり言う子供は今まで会ったことがない。
たいていの貴族の子供は見栄っ張りで、できないことでもできるというのがほとんどだったからだ。
オスカルはうれしくなった。
「よし、じゃあまず構え方からだ。」
子供同士の剣のレッスンが始まった。オスカルはアンドレの飲み込みの早さとカンの良さに舌を巻いた。
技術や形はぎこちないが、オスカルの動きに必死についてくる集中力。一通りの基礎を教えたところで、
オスカルは実際に手合わせをしようと提案した。
「父上もおっしゃっておられたが、剣の稽古は何回も何回もして初めて効果があがるということだ。それ、
アンドレ、行くぞ。」
アンドレも今さっき教えられたとおりやってみるがかなうわけがなかった。オスカルの振り下ろした剣がアン
ドレの頭を直撃してしまった。真剣でなかったから切れることはないが、それでもかなりの痛みだ。
「痛たた・・・。」
と涙ぐむアンドレにオスカルは笑いながら再度仕掛ける。
「あはは、だらしないぞ、ほら、アンドレ。」
「うわー、ちょっと待った〜〜。」
ジャルジェ家の庭からは子供の楽しそうな笑い声が響いていた。

 部屋の窓からオスカルとアンドレの剣の稽古の様子を見ていたジャルジェ夫人は満足げな笑みを浮かべ
て、夫に話しかけた。
「ほら、ご覧になって、あなた。オスカルがあんなに楽しそうに。あんなオスカル、初めて見ましたわ。わたくし
のサロンに集まる貴族の家の子供が遊びにきても、あんな風に笑って遊ぶオスカルは見たことがありませ
んでした。表面は丁寧に接していても、あの子はちっとも楽しそうじゃありませんでしたわ。わたくし、心配し
ていましたのよ。あなたの風変わりな教育のせいで、オスカルは子供らしさを無くしてしまったのかしらっ
て。」
「おいおい、わたしの風変わりな教育とは聞き捨てならんな。私はオスカルを立派なジャルジェ家の跡継ぎと
なるよう、いろいろなことを教えているだけだぞ。」
「あら、それが風変わりなのですわ。多くの貴族の子弟はオスカルの歳ではまだ読み書きだって満足ではあ
りませんわ。それなのにあの子ったら、簡単な本を読めるくらいになっていて。興味のあることといったら、
剣、馬、読書。これではまるであなたを小さくしたようなものですもの。ほかの子供達と話が合わなくて当然
でしょう。」
ジャルジェ家の当主も妻の言葉が的を得ていて二の句がつけない。
「それにしても、アンドレはなかなか見込みがある子供ではないか?」
彼はあわてて話題をアンドレに振った。
「ええ、わたくし、一目でアンドレを気に入りましたのよ。素直でかしこそうじゃありませんこと?
わたくしのサロンに来る貴族の子供とはまったくちがって、子供らしい快活さに満ち溢れているじゃあありま
せんか。アンドレなら、オスカルのいい友達になれそうですわ。」
夫妻は目を細めながら庭を走り回る2の子供をしばらくの間見つめつづけていた。

 何度剣を合わせても負けつづけたが、アンドレはそれでも辛抱強く何度もオスカルに挑んでいった。
そしてやがで、二人でかけっこのように裏庭の木立までやってきて、そのまま草の上に転がった。
二人の子供の弾む息が当たりに響いた。途端にアンドレが
「よし、今度は俺が木登りを教えてやるよ。」
といった。
「木登り?僕ずっとやってみたかったんだ。でも他の子供を誘っても洋服が汚れるから嫌とか、中にはいき
なり泣き出すやつもいて、今までやってみるチャンスがなかったんだ。よし、やろう、アンドレ。」
2人は靴を脱ぎ、裸足になった。オスカルは今まで感じたことの無いわくわくした思いを押さえきれなかっ
た。アンドレがオスカルに手と足の置き方を教える。まずオスカルが登り始めた。次の手足の位置を教える
アンドレの声が下から届く。木の中ほどの枝まで到達すると、オスカルは枝に腰掛けた。すぐにアンドレが
後を追って同じ高さの枝に腰かけた。オスカルは普段見なれた景色が木の上からみるとまったく別のもの
に見えることを初めて知った。
「どう?」
アンドレが尋ねる。
「いい気持ちだ・・・。」
オスカルが答える。
木の上では、風も普段と違う風のように感じる。木々のざわめきがより鮮明に聞こえる。新しい世界に来た
みたいだった。オスカルがアンドレに目をやると、気持ちよさそうに黒髪を風になびかせていた。
オスカルは改めて珍しいものでもみるようにアンドレをまじまじと見つめた。こんな少年は今まで会ったこと
がない。生き生きとして、よく笑って。確か両親を亡くしたばかりのはずだ。
「アンドレ、お前の父上と母上はもういないの?」
「うん、とうさんもかあさんも遠くにいっちゃった。」
「寂しくないのか。」
「そりゃ寂しいさ。でも、いつかきっとまた会えるって、俺信じているんだ。俺が一生懸命生きていたら必ず会
えるって。だからそれまで、俺泣かないって決めたんだ。」
オスカルは何故だかわからないが心の中が洗われる心地がした。
「でも、アンドレ、泣きたくなったらいつでも僕のとこ来いよ。」
「うん、ありがとうオスカル。」
オスカルはうれしくなった。―ありがとう、オスカル―家族以外で自分を「オスカル」と呼び捨てにする人間は
一人もいなかった。使用人は「オスカル様」だし、貴族の子供たちは「オスカル・フランソワ」とセカンド・ネー
ムまで入れて呼ぶ。呼び捨てにされるとなんだか友達みたいじゃないか。アンドレはアンドレで、ベルサイユ
への道中、祖母からお屋敷での生活では、ジャルジェ家の人達には必ず「様」付けで呼ぶように言われてい
たが、思わず口をついて「オスカル」と呼び捨てにしてしまったことに自分で驚いた。貴族のお嬢様と聞かさ
れていたから、きっと気取ってすました子供だろうと思っていたら、実際のオスカルは剣を一生懸命自分に
教えてくれ、自分が教える木の登り方を素直に実行して、そして泣きたくなったらいつでも自分のとこに来い
という。貴族のお嬢様だからと、最初は身構えていたけれど、なんだかオスカルと一緒にいると自然でいら
れる。2人の子供の間には身分や家柄よりもお互いに自然でいられることのほうが重要だった。
「そうだ、アンドレ、お前、本は好きか?」
「うん、とうさんに字を教えてもらって読めるけど、まだ難しい本は無理なんだ。教会に置いてある本はほと
んどが難しすぎて読めなかった。オスカルはどんな本が好きなんだい?」
「私は今、イスデーラが1756年に発表した本を読んでいるんだ。冒険の話で面白いんだ。」
「へぇぇ、おもしろそうだなぁ。イスデーラの本は、彼がもっともっと前に書いた本を見たことがあるけど、まだ
俺には難しくて読めなかったんだ。」
「よし、明日、家の図書室を案内するよ。アンドレ。」
「家に図書室があるのか?うわぁ、びっくりだな、それは。」
「我が家の図書室は父上がいつも自慢しておられる。驚くなよ、アンドレ。」
2人はいつまでもいつまでも木の上で語り合い、笑い合った。
 1762年9月。ベルサイユの空を渡る風が、オスカルとアンドレをそれぞれのを新しい世界に優しく導いて
いた。