「 うたたね 3 」


その日、アンドレは、司令官室で、書類の整理をしていた。

( そろそろ オスカルが、会議から帰ってくるころだな・・・)

と思っていたら、司令官室のドアが開き、案の定 オスカルが疲れきって 入ってきた。
「我々と入れ違いに 休暇にはいるはずだった隊が、休暇取り止めになったそうだ。」

そして、手袋を机に バサッと投げつける。
「会議場のまわりの警備を増やせ との命令だ。 まったく!」

その動作は、命令を下したブイエ将軍に向けられた、いらだちでもあった。
そして、彼女は軍服の襟を緩めると 大きくため息をつき、ソファーに行儀悪く その身をあずけた。
「 つかれ・・・た・・・ 」

アンドレは、滅多にきくことのない、彼女の 泣き言めいたつぶやきに、ふと、胸を突かれて、
近寄ると、ソファーの 肘掛部分に座った。
警備におわれて、会議の進展具合など 肝心な事は きっとまだ 耳にしていないだろう、と思い、
今日の午前中に手に入れた アジビラを 読み上げてやることにした。

しばらく、オスカルは それを聞いていたが、ふうっとめまいのような、眠気が訪れた。
アンドレは、胸元に 彼女の重みを感じて、はっとした。
彼女は軽い寝息をたてて、眠り込んでいる。

( かわいそうに・・・つかれきっているのか・・・女の身で なぜこうまでして・・・)

それにしても・・・。アンドレは考えた。
( こいつ、最近 むずかしい顔して考えこんでばかりいる・・・・・。
  笑った顔を ずいぶん見てないよなぁ・・・・・

あ! あれ、やっちゃおうかなあ!? 子供の頃、よくやった あれ!
でも、昔 おばあちゃんの目の前でやったら、死ぬほど引っ叩かれたしな・・・
オスカルも怒るだろうか? )

それを考えると、彼の額にタラリと汗が流れた。

( でも、少しでもなごんでくれるなら、ちょっとばかし怒られたって、なんでもないや!
  よ〜し・・・! )
そして彼は、そうっと手を伸ばして、オスカルの顔に迫った。
彼女はグッスリ眠り込んでいたので、彼の気配すら感じていなかった。

と! いきなり「 ずぽ!」と言いながら、アンドレは人差し指と中指で、
オスカルの鼻の穴をふさいだ。
「 ・・・! っ! フ・・ガァッ! 」
突然の呼吸困難で、オスカルは目覚めた。

「 やったね! 隙あり! いっぽん! 」
にっこり笑って ピースサインをするアンドレ。

「 ばっ!・・ばかやろうっ! おまえ幾つになったんだっ! 
それが30越した大の男がすることかっ!! 」

バチーン!

やはり平手をとばされたアンドレであった・・・。


FIN