遠い夏の日




それはまだオスカルトアンドレが10にもならないころ
 
まだお互い少年として、子犬のように無邪気に遊びまわっていたころ。

夏の日の青々とした若葉の日陰で遊び疲れた二人が

不意に将来の話をし始めた

「アンドレ、僕は大人になったら父上よりも立派な将軍になるんだ」

「おまえならなれるよ」

「あお前は将来どうしたい?

「俺・・?」

まだ幼いながらも、アンドレは自分の身の程を知っている。

オスカルのように、出世を望める身分ではないことを。

けれど愛されて育った人間だけが持つ品とでも言ったらよいだろうか、

そういうものがアンドレには備わっていて、僻んだり、ねたむ心は起きない。

幼いころに母をなくしたとはいえ、亡くなる前に十分母親からあいされ、

母親がなくなったあとは祖母に引き取られ愛されて、主人に当たる

ジェルジェ将軍夫妻も乳母の子ということで純朴なアンドレを子供のように

可愛がってくれている。

アンドレはオスカルと同じ教育さえ受ける機会が少なくなかった。

オスカルが家庭教師に教わっているとき、アンドレは同席させてもらう機会も

少なくなかった。

身分から言ったらありえないことだが将来護衛として宮殿にも出入りするだろう

アンドレを思い、特別なあつかいを受けていた。



だが祖母はアンドレにお前はオスカルさまとは身分が違うのだからねと

釘を刺すのは忘れなかった

オスカルと同じような身分にはなれないことは知っている

少年はわかていた。


「俺は・・・そうだな・・・うん。そうだ」

「おもいついたのか?」

「ああ。俺は、めちゃくちゃ綺麗で気高くて、そんなお姫様と結婚するんだ」

「童話の王子みたいにか?」

「そう、世界一綺麗な」

「僕のほうがもっともっと綺麗なお姫様と結婚するんだからな!!」

ひとつ年上のアンドレに対してオスカルはいつもささやかな挑み心をもっている。

だからアンドレに張り合うようにオスカルはいった

「じゃアンドレ、賭けをしよう、将来どっちがものすごく綺麗なお姫様と

結婚するか、」

「ああ。いいぜ」

遠い夏の日の約束・・・・・

「賭けに勝ったのは俺だな。」

眠るオスカルの顔と髪を、起こさないようにそっと撫でながらアンドレは言った。