月世界より 3.5


ぼくは、クー。 
ルナ・ホース。

ルナ・ホースはとっても賢いって、どこの星域のヒトからも喜ばれる。
誰の命令でもわかっちゃうから、きっと語学の天才だろうなんて言われる。
ちがうんだ。
ぼくたちは言葉をわかるんじゃあなくって、心で感じるんだから。
ああ、このヒトはこうしてほしがってるな?って、頭にビビンってくるんだ。
相手によって、すっごくわかりやすいヒトと、わかりにくいヒトがいるんだけどね。

ちなみに、ぼくのご主人はルナンだ。
そう、故郷がいっしょ!
そのせいかどうか、ぼくたちの間に言葉なんていらない。
ぼくもご主人の気持ちが目に見えるようにわかるし、
ご主人もぼくの気持ちを全部わかってくれる。
だから、とっても楽・・・・・・なことばかりじゃあない・・・・・
イタズラしようとしても、すぐばれちゃうからね。
でも、ぼくが子どもだからか、たいていのことは仕方ないか、って感じで許してくれる。
やさしいヒトなんだ。

ご主人の名前はアンドレ。
アンドレは草や木とも話しをしている。
そういうときは、ぼくから心が離れるから、イタズラや冒険のチャンスなんだ。
このあいだなんか、ラボから外へ出られたんだよ!
でも、ラボの外に出るとなんだか身体が重いんでちょっとつまんない。
アンドレも速くは走れないから、おあいこだけどさ。
そのときは、通りかかったヒトに捕まえられてやった。
え? 
そうさ、わざと捕まったんだよ?
だって、彼らに敵意は感じなかったしね。
アンドレがぼくのこと心配してるのも伝わってきてたし。

彼らとアンドレは気があったみたいだ。
ちょくちょくラボに遊びにくるようになった。
彼らからは、アンドレやぼくに対する突き刺すような好奇心や、いやな嫌悪感は感じられない。
だから警戒しないで済むし、アンドレが楽しそうでぼくもうれしかった。

けど・・・・・・
ある日を境にアンドレが変わっちゃったんだ。
ぼくに気持ちを見せてくれないんだ。
無理に覗こうとすると、すっごい怒られる。
でも、ぽろっと見えたイメージは不思議だった。
金色の髪と、青い瞳と、透き通るような花びらをしたばら・・・・・
こんなイメージ、初めてだ。
ぼくがびっくりしてアンドレを見つめていたら、なんか顔が赤くなったし。
どうしたんだろう?

ぼくは落ち着かない。
ルナ・ホースには、ちょっとした予知能力があるんだ。
なにか、アンドレの運命を揺るがすようなことが起きそうで・・・・・
それがいいことなのか、悪いことなのか・・・・・
とにかく、気持ちがさわいで落ち着かないんだ。
だって、その時はすぐそこまで近づいてるから・・・・・