月世界より 9.5


ぼくはクー。
アンドレといっしょにラボ(研究室)暮らし。
このラボは、アンドレとぼくの故郷であるルナと同じ環境にしてあるから
とっても住み心地がいいんだ。
ぼくの大好きな植物もいっぱい植えてあるしね!
枝から枝へ飛び移りながら、アンドレと鬼ごっこするのがすごく面白い。
二人っきりのときだと、よくそうやって遊んでくれるんだ。

今、めずらしくお客さんが来てる。
オスカルとジェローデル。
オスカルは3回目、ジェローデルははじめて。

なんだかアンドレの様子がおかしい。
このごろは、アランやジャンがお茶を飲みに来ると喜んでいたのに、
今日はちっともうれしくないようだ。
ほら、オスカルも気にしてる。
きれいな青い目(ほんとうにきれいなんだよ!)でアンドレを見てるのに、
アンドレったら、視線を逸らせてばかりいるから気がついてない。
ほら、オスカルがさみしそうな顔してる。
アンドレは意識的に感情をブロックしているようで、
ぼくの気持ちも読んでくれない。
必死で教えてあげているのに・・・

あ〜あ、オスカルもあきらめて帰っちゃうよ。
なんだか、アンドレに訊きたそうにしてるのになぁ。
アンドレったら、ちっとも気づいてあげないんだから。
ジェローデルと目で合図した。
それをちらっと見たアンドレが、また目を背ける。
もう、なにやってんだか。
ジェローデルは悪い人じゃなさそうなんだけど、
なんとなく早くオスカルと二人になりたがってるようだ。
オスカルもそれがわかったのかな?

二人とも、帰り際にぼくを見つけて近寄ってきた。
オスカルは、にっこりほほえみながらやさしく撫でてくれた。
ジェローデルの撫で方も、男性にしては優雅な感じ。
おかえしに、うれしいよって気持ちを送ったら、
オスカルはまたにっこりして、ジェローデルはちょっとびっくりしてた。

二人が帰った後、アンドレはさらに落ち込んでいるようだった。
ぼくまで引きずり込まれそうで、そばに寄れないくらい。
しょうがない、しばらくそっとしておこう。
ぼくって、オトナでしょ?